蔵王連峰(奥羽山脈の一部)の特殊な気象条件と植生が造り出す、世界でもあまり類をみない“氷”と“雪”の芸術品
一つとして同じものはなく、刻々変化するその姿は雄大で繊細
「スノーモンスター」とも呼ばれている“蔵王の樹氷”は、大自然の脅威を体感する山形の郷土遺産 -宝物-
蔵王に多く自生する針葉樹、樹氷になる木「アオモリトドマツ」。
しかし、その「アオモリトドマツ」は、平成25年(2013)に発生したトウヒツヅリヒメハマキの食害と平成28年(2016)以降に衰弱した木がトドマツキクイムシの被害により、広範囲に枯死する深刻な状況に。年々その姿も小振りで期間も短くなってきている。
近い将来、今までのような“蔵王の樹氷”が観られなくなるかもしれない。
だからこそ、今、みなさんに“蔵王の樹氷”の姿を観てほしい!“蔵王の樹氷”を知ってほしい!
「観ること」「知ること」が“蔵王の樹氷”を守る第一歩!
“蔵王の樹氷”があぶない‼
オオシラビソ(アオモリトドマツ)は、多雪地帯の東北地方に多い針葉樹であり、樹氷を形成する樹木のひとつである。最大で標高40m、直径1mに達する大木となる可能性があるが、山岳地帯の過酷な環境のため、ほとんどの場合はそれほどの樹高にはならない。
オオシラビソの寿命は一般的に約300年とされ、成長は非常に遅く、小さい頃は1年で数㎝しか上に伸びない。同じモミ仲間のシラビソに比べてもオオシラビソは非常に遅い。さらに、実をつけるのは発芽してから50年以上経過後であり、子孫を増やすことは大変なことである。
そして、種子の散布だが、多くのことが未解明となっている。ただ、ホシガラスなどの鳥類による散布の報告はない。散布はほとんどが風のようだが、種に付いている翼が小さくほとんど飛ばないのでどのように分布域を拡大してきたかは解明されていない。
近年、蔵王の樹氷はものすごい速度で減少している。
これは、トドマツノキクイムシの大発生による被害が影響していると考えられている。トドマツノキクイムシは、ゾウムシ上科キクイムシ科ヨツメキクイムシ属の1種であり、オオシラビソなどを含むモミ属の樹皮下に穿孔して、内樹皮を加害する。さらに、気温が15℃以上になると飛翔する性質がある。
大発生の要因として2つあると考えられている。1つは、トウヒツヅリヒメハマキの大発生である。
平成25年(2013)から平成28年(2016)の間、蔵王にて大発生した。トウヒツヅリヒメハマキの幼虫はオオシラビソの葉を食べるため、樹氷の生成を妨げていた。
被害終息後からトドマツノキクイムシが穿孔しやすい環境になっていることもあり、影響があると考えられている。もう1つは、地球温暖化の影響である。
近年の蔵王は15℃以上になる日が多くなり、トドマツノキクイムシが飛翔し、別のオオシラビソに移り加害することで被害が拡大していると考えられる。
虫害への対策としては伐倒駆除や薬剤散布が挙げられるが、天然林での実施は難しく具体的な対策はほとんどないのが現状である。そのため、倒木や立枯木を除去するなど、キクイムシの密度上昇を防ぐことが重要であるとされている。虫害への対策としては伐倒駆除や薬剤散布が挙げられるが、天然林での実施は難しく具体的な対策はほとんどないのが現状である。そのため、倒木や立枯木を除去するなど、キクイムシの密度上昇を防ぐことが重要であるとされている。
オオシラビソを増やすための取り組みとしては、植樹が挙げられる。林野庁山形森林管理署は令和元年(2019)5月30日、蔵王ロープウェイの地蔵山頂駅(標高1661m)周辺でオオシラビソの試験植樹を初めて行った。この地域は国立公園の特別保護地区のため規制が厳しく、自然環境を変えるような対策を行うのは難しい。種をまいたり、下草を刈ることで若木の成長を促したりしているが、打開策を見いだせないのが現状である。今回、環境変化を抑えるために同じ環境下で育つ自生苗に着目し、自然公園法に基づき県に同意を得た上、被害の大きい地蔵山頂駅周辺への移植が行われた。ササを刈払った約10m²に約20-30cmの穴を掘り、標高約1300mの区域から採取した20cm程の自生苗10本を職員らが一つずつ植えていった。一度で移植できるのは10本程度で、スギやヒノキの植林のようにすぐには増やせず、10年単位で時間がかかるとされている。標高が高く厳しい環境のため研究事例も乏しく若木が育つかは不透明であるが、定着が進み森林再生に繋がることが期待されている。
オオシラビソを増やすための取り組みとしては、植樹が挙げられる。林野庁山形森林管理署は令和元年(2019)5月30日、蔵王ロープウェイの地蔵山頂駅(標高1661m)周辺でオオシラビソの試験植樹を初めて行った。この地域は国立公園の特別保護地区のため規制が厳しく、自然環境を変えるような対策を行うのは難しい。種をまいたり、下草を刈ることで若木の成長を促したりしているが、打開策を見いだせないのが現状である。今回、環境変化を抑えるために同じ環境下で育つ自生苗に着目し、自然公園法に基づき県に同意を得た上、被害の大きい地蔵山頂駅周辺への移植が行われた。ササを刈払った約10m²に約20-30cmの穴を掘り、標高約1300mの区域から採取した20cm程の自生苗10本を職員らが一つずつ植えていった。一度で移植できるのは10本程度で、スギやヒノキの植林のようにすぐには増やせず、10年単位で時間がかかるとされている。標高が高く厳しい環境のため研究事例も乏しく若木が育つかは不透明であるが、定着が進み森林再生に繋がることが期待されている。
資料提供:山形大学・山形大学附属博物館
アオモリトドマツ林の再生への取組
森林の公益的機能の維持に向け、キクイムシ等により被害を受けたアオモリトドマツ林の維持・再生に取り組みます。
蔵王地域の主に蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅周辺で、樹氷を形成するアオモリトドマツが2013年にトウヒツヅリヒメハマキの食害による葉の変色被害を受けました。
その後、同地域で2016年以降衰弱した木がトドマツノキクイムシ(以下、キクイムシ)の穿孔による枯死被害が増加しています。
そこで、山形県(森林研究研修センター含む)、山形市、森林総合研究所東北支所と連携し、アオモリトドマツ林の維持、再生に取り組んでいます。
◇再生に向けた取組を推進します。
① 引き続きアオモリトドマツの自生苗を採取し、試験的に移植
② 引き続きアオモリトドマツ稚樹の育苗試験
③ 引き続きアオモリトドマツの自生苗の生育場所把握調査等を実施
① ドローンを活用した被害状況調査
② トウヒツヅリヒメハマキの食葉被害の継続調査
③ キクイムシによる被害のモニタリングの継続調査等
④ 林況調査の継続等を実施
① 関係機関と連携して、現地で小学生等を対象とした森林体験学習等を実施(新規)
② 森林総合研究所東北支所、山形大学、山形県森林研究研修センターなどの関係機関と連携して調査等を実施
資料提供:山形森林管理署
“樹氷原×アオモリトドマツ林”エリアマップ
樹氷体験ポイント
-
Point 1 安全に快適に。ロープウェイで大迫力の樹氷原パノラマへ!
温泉街から雪上を歩かなくてもロープウェイ(2本乗車・最短約18分)で、雪原を埋め尽くす360°樹氷に囲まれた樹氷原に直行!
-
Point 2 “昼”と“夜” 2つの顔の樹氷原! 「デイライト樹氷」&「樹氷ライトアップ」
自然光と時が奏でる雄大な樹氷に加え、漆黒の闇の中で色彩豊かなカクテル光線に浮かび上がる幻想的な樹氷。“昼”と“夜”、“光”と“影”が織り成す樹氷は必見!
「樹氷ライトアップ」のスケジュールはこちら -
Point 3 4つのビュースポットで 樹氷ウォッチング!
蔵王ならではの体感スポットで、思う存分、樹氷を満喫!
-
Spot 1 ロープウェイ車窓
最新の循環式18人乗りのゴンドラで、ゆったり座って大きな窓から樹氷原を望む空中ビュー。
-
Spot 2 地蔵山頂駅前観賞エリア
ロープウェイ山頂駅を降りれば、目の前に樹氷群。迫力のスケールを間近で体感。
(ただし安全ロープ内でご観賞ください) -
Spot 3 地蔵山頂駅 山頂テラス(屋上展望台)
オープンデッキの展望台から360°絶景の樹氷原を一望。雲、風の流れ、山々の遠景なども見所。
(ただし悪天候の場合利用できません) -
Spot 4 地蔵山頂駅 レストラン山頂
暖かく大きな窓から快適に観賞。寒さが苦手な人にもオススメのレストランビュー。
-
Point EX 「樹氷」と楽しむアクティビティポイント
Act 1 「樹氷」×「スキーリゾート」
標高1,661mスタートの樹氷群を掻き分けるロングダウンヒルコース。ザンゲ坂・樹氷原コースを爽快な気分で大滑走!(ただしライトアップタイムは滑走できません)
詳しくはこちら -
Act 2 「樹氷」×「ナイトクルージング」
新型雪上車「ナイトクルーザー号」でライトアップされた樹氷原をクルージング。
詳しくはこちら
(※予約が必要です) -
Act 3 「樹氷」×「蔵王開運回遊」
「蔵王三大神(蔵王地蔵尊、蔵王大黒天、蔵王大権現)」の力、パワーストーン「TS-STONE(トニー・ザイラー顕彰碑)」の力、そして樹氷原の大自然の力で運気上昇!?
詳しくはこちら -
Act 4 「樹氷」×「恋人の聖地」
ココからはじまる、幸せ広がれプロジェクト。樹氷原エリアのある蔵王ロープウェイは、プロポーズにふさわしいロマンチックなスポット『恋人の聖地サテライト』。山頂駅展望台にあるハートロックフェンスで愛むすび。
「恋人の聖地」のご案内 -
Act 5 「樹氷」×「温泉」
標高900m、高地のいで湯。開湯伝承1900年の源泉かけ流し100%天然温泉。樹氷観賞の後は、全国有数の強酸性硫黄泉、雪見風呂で気分リフレッシュ。
「蔵王温泉」のご案内
-
樹氷原へのアクセスは2つ
「ロープウェイで直行」と「ゲレンデを楽しみながらリフト乗り継ぎ」
- 樹氷は時期、気象によって形、見え方が異なります。
- お客様の安全と樹氷保護のため、所定のエリアでご観賞ください。(安全ロープの外には、決して立ち入らないでください。)
- 樹氷は貴重な自然現象です。決して直接触らないでください。
- 防寒対策を万全にしてください。特に「樹氷ライトアップ」では-10 ℃以下になりますので、更にお気をつけください。なお、山頂駅では、長靴の貸出を行なっています。
-
樹氷原には、蔵王ロープウェイ山麓線と山頂線を乗り継いでいきますが、雨天、濃霧、雷、強風のいずれかの天候で、又は天候の回復が見込めない場合は、中止することがあります。運行確認をお願いいたします。
また、山頂展望台も立ち入り禁止になる場合もあります。 - スノートレッキング等で観賞エリアの外に出る場合は、入山届の提出と蔵王山岳インストラクター又は冬山登山経験者の同行をおすすめします。
樹氷ができる条件
樹氷は、東北地方の奥羽山脈の一部の山域(八甲田山、八幡平、蔵王連峰、吾妻山)の亜高山地帯にしか確認されず、海外でもはっきりした報告はありません。樹氷ができるためには、次のような特殊な条件が必要だからです。
-
着氷と着雪の基になる多量の過冷却水滴と雪が、常に一定方向の強風で運ばれてくること。
(風向が一定しないと、樹氷は成長しません。気温が高いと雪が解け、また低すぎても雪がつきにくい。) -
植生として、「アオモリトドマツ(学名:オオシラビソ Abies mariesii・亜高山針葉樹林の代表種)」などの着氷と着雪の起こりやすい常緑針葉樹が自生していること。
(ブナなどの落葉広葉樹では氷や雪がつきにくい)
積雪が適量であること。
(雪が多すぎると、「アオモリトドマツ」は埋没します。また少なければ、当然樹氷はできません。なお、蔵王の樹氷原の積雪の深さは、平年で2~3m程度です。)
冬の蔵王の気象
シベリアからの北西の季節風は、日本海の対馬暖流(夏は25℃くらい、冬でも10℃前後)から多くの水蒸気をもらい雪雲をつくります。その雪雲は朝日連峰で上昇して多量の雪を降らせ、山形盆地を通り、再び蔵王連峰で上昇して雪を降らせます。そのときの雲の中は、多くの雲粒が0℃以下でも凍らない過冷却水滴になり、雪と交じり合った状態になります。蔵王の1~2月頃は快晴の日が少なく、風向は北西から西を示し、平均風速10~15 m/s、平均温度-10~-12℃の吹雪の世界となります。
蔵王の樹氷はこうした気象条件で成長します。
樹氷のでき方
樹氷は、「アオモリトドマツ」に
① 着氷(雪雲のなかの「過冷却水滴」が枝や葉にぶつかり凍りつく)
② 着雪(着氷のすき間に多くの雪がとり込まれる)
③ 焼結(0℃付近の雪は、互いにくっついて固く絞まる)
という現象の繰り返しで、氷と雪に覆われ、風上に向かって成長します。こうしてつくられた樹氷の表面は、その形状から「エビのしっぽ」と呼ばれています。「エビのしっぽ」は、先端をはじめ、縁や外側部分で盛んに成長するため、発達する幾つも重なり合って群れをなします。尾びれ状の長さは10cm程度で、叩くと簡単に壊れます。また、樹氷群を巡る風は様々に乱れ、樹氷表面のエビのしっぽは複雑に変化し、樹氷独特のスタイルを造り出します。
蔵王に行こう!樹氷を観に行こう!
蔵王樹氷まつり2022